ソニーの無配大赤字の理由と体質

ソニーは2014年9月17日に、2015年3月期の連結業績見通しを下方修正し、上場以来初の無配になると発表しました。これを受けて上昇基調にあったソニーの株価は当然下がったものの、大暴落というほどのものにはなりませんでした。

投資初心者なら一千億円を超える赤字に上場以来初の無配と聞いて「げげげ、ソニーはもうだめか!」と投げ売りしそうなところですが、もとより最近「ダメ」と言われていたソニーですから、最近新たにソニー株を購入した投資初心者も多くはないとみえ、さほどの大暴落にはなりませんでした。

この点で良い記事が「第5回 ソニーを無配に追い込んだ「のれん」1800億円減損から読み取れるもの」という日経テクノロジーオンラインの記事。読むにはユーザー登録が必要ですが、「会計視点で見る話題の業界動向」というこの記事が掲載されているコラム自体、なかなか勉強になります。

今回のソニーの大赤字は、携帯電話関連の「のれん」の全額を一挙に減損処理するに伴うためのものとのこと。「のれん」というのは、記事を読んでもらうと良くわかりますが、企業買収に伴い、買収価格と買収された企業の資産価格との差額のこと。要は「既に支払ってしまっている現金が、資産として計上されていた」というもの。減損処理は「のれんの分を資産から消し去る」ことであって、実際に今お金を払うわけではないもの。要は「高すぎた買い物」を「高過ぎた」と認めて、実勢の価値に置き換えることですね。

となると、のれんの減損処理で大赤字に陥ったとしても、実際の企業の体力を示しているものではない、ということ。それがわかっている人がソニー株の保有者だったから、発表の内容の割にソニー株の下げ幅が小さかったのでしょうね。

もう一つソニーに関連してお勧めの記事は「第1回 ソニー、セグメント別損益管理とイノベーションは両立するか」というもの。ソニーは事業ごとに業績管理を行っており、この点ではいわゆる「アメーバ経営」に似た形を取っています。

ここで著者が指摘しているのは、事業ごとの業績管理の負の側面。事業ごとの独立性が高くなるがために、事業横断型のイノベーションが起きにくくなるという、構造的な問題。うーん。なるほど。「アップルには損益計算書は一つしかない」ということも書かれていますが、そこの違いも大きいわけですね。